📋 この記事でわかること
配偶者の浮気が原因で別居した場合に、生活費にあたる「婚姻費用」を請求できるのかを整理します。算定表のおおまかな見方、請求を始めるタイミングと流れ、浮気をした側(有責配偶者)が請求するときの扱い、慰謝料との違いまでを、別居期間に特有の論点に絞って一般的な考え方として解説します。
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配偶者の浮気が発覚し、いったん距離を置くために別居を選ぶ方は少なくありません。ただ、別居して真っ先に直面するのが「生活費はどうなるのか」という現実的な不安です。専業主婦(主夫)の方や、収入差が大きい夫婦であればなおさらでしょう。ここで関わってくるのが「婚姻費用(こんいんひよう)」という考え方です。
婚姻費用は離婚するかどうかとは別の問題で、婚姻関係が続いている限り、別居していても発生し得るとされています。この記事では、浮気をきっかけに別居したケースを念頭に、婚姻費用がもらえるのかどうか、いくらくらいになるのか、どう請求していくのか、という別居期間ならではの論点を順番に整理していきます。最終的な金額や法的な判断は個別事情で大きく変わるため、専門家への相談を前提にお読みください。
婚姻費用とは何か(慰謝料との違い)
婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を送るうえで必要となる費用のことを指します。具体的には、衣食住の費用、子どもの養育費や教育費、医療費などが含まれるとされています。民法では夫婦はその資産・収入・社会的地位に応じて婚姻から生じる費用を分担する義務がある、という趣旨の定めがあり、これが婚姻費用分担義務の根拠とされています。
ここで多くの方が混同しがちなのが、婚姻費用と慰謝料の違いです。両者は性質がまったく異なるため、整理しておきましょう。
| 項目 | 婚姻費用 | 慰謝料 |
|---|---|---|
| 性質 | 別居中の生活費の分担 | 浮気による精神的苦痛への賠償 |
| 発生する期間 | 原則として別居から離婚(または同居再開)まで毎月 | 不貞という事実に対して一括で清算するのが一般的 |
| 浮気の有無 | 浮気がなくても発生し得る | 浮気などの不法行為が前提 |
| 根拠となる証拠 | 双方の収入資料が中心 | 不貞を裏づける証拠が中心 |
つまり、婚姻費用は「別居しても夫婦である以上は生活を支え合いましょう」というお金、慰謝料は「浮気で傷つけた分を償いましょう」というお金です。両者は別々に請求できるとされており、片方をもらったからもう片方はもらえない、という関係ではありません。慰謝料そのものの相場については浮気の慰謝料相場の記事もあわせてご覧ください。
別居しても婚姻費用が発生する理由
「別居しているのに、なぜ相手の生活費を負担しなければならないのか」と感じる方もいます。しかし、別居はあくまで物理的に住まいを分けた状態であって、法律上の婚姻関係が解消されたわけではありません。婚姻関係が続いている以上、収入の多い側が少ない側を支える分担義務は残り続けるというのが一般的な理解です。離婚が成立して初めて、この義務は消滅します。
浮気で別居したら婚姻費用はもらえるのか
結論として、浮気を理由に別居した場合でも、収入の少ない側が多い側に対して婚姻費用を請求できるのが原則とされています。問題になりやすいのは「どちらが浮気をしたのか」という点です。状況を分けて考えてみましょう。
- 浮気をされた側が請求する場合:収入が少ない側であれば、原則として満額に近い形で請求できるとされるのが一般的です。
- 浮気をした側(有責配偶者)が請求する場合:自ら別居の原因を作っておきながら生活費を求める形になるため、後述のとおり扱いが異なるとされています。
- どちらに非があるか不明な場合:浮気の事実関係が争われている段階では、まずは収入差に基づいて算定されるのが通常です。
大切なのは、婚姻費用は「離婚するかどうか」の結論を待たずに、別居が始まった時点から問題になるという点です。別居が長引くほど受け取れたはずの金額の積み重ねも大きくなるため、早めに動くことが重要だとされています。浮気の有無が争点になりそうな場合は、有効な証拠の集め方も並行して確認しておくとよいでしょう。
有責配偶者からの請求はどう扱われるか
浮気をした側、つまり有責配偶者が自分の生活費として婚姻費用を請求してきた場合、一般的には信義則の観点から請求が制限される、あるいは減額されることがあるとされています。ただし、子どもがいる場合は事情が変わります。子どもの養育に必要な部分は、親の責任の有無とは切り離して保護されるべきものと考えられているため、親自身の生活費分は否定されても、子どもにかかる費用については認められる傾向があるとされています。このあたりは個別性が高く、最終的には弁護士など専門家の判断が必要です。
婚姻費用の金額はどう決まるのか
婚姻費用の金額は、夫婦の話し合いで自由に決めることもできますが、目安として「婚姻費用算定表」が広く使われています。これは裁判所が公表している表で、義務者(支払う側)と権利者(受け取る側)の年収、子どもの人数と年齢をもとに、おおよその月額が早見できるようになっています。
算定で大きく影響するのは、主に次の要素です。
- 支払う側の年収(給与所得か自営業かでも見方が変わる)
- 受け取る側の年収
- 子どもの人数
- 子どもの年齢(0〜14歳か、15歳以上かで区分されることが多い)
| 世帯の状況(例) | 月額の目安の考え方 |
|---|---|
| 夫婦のみ・収入差が大きい | 子の費用が乗らない分、養育費よりは抑えめになりやすい |
| 子どもあり・受け取る側が監護 | 子の人数・年齢が増えるほど月額が上がる傾向 |
| 双方とも一定の収入がある | 収入差が小さいほど月額は小さくなる傾向 |
ここで挙げた金額の考え方はあくまで一般論であり、具体的な数値は算定表と個別事情に基づいて決まります。住宅ローンを支払う側が住んでいる家に相手が残っている場合や、私立学校の学費といった特別な費用がある場合は、表の数字をそのまま当てはめられないことも多く、調整が必要になります。正確な見込みを知りたい場合は専門家に試算してもらうのが確実です。
いつから・いつまでの分がもらえるのか
婚姻費用は「請求した時点」からの分が認められるのが一般的な実務とされています。別居した瞬間に自動的に過去分まで遡って発生するわけではなく、相手に請求の意思を明確に伝えた時点が起算点になりやすい、という点に注意が必要です。だからこそ、別居を始めたら早い段階で内容証明郵便や調停の申し立てといった形で、請求の意思を記録に残しておくことが大切だとされています。受け取れる終期は、原則として離婚が成立するか、同居を再開して別居が解消されるまでです。
婚姻費用を請求する流れ
実際に婚姻費用を請求する場合、いきなり裁判になるわけではありません。一般的には次のような段階を踏みます。
- 当事者間の話し合い:まずは直接、または書面で支払いを求めます。合意できれば合意書を作成しておくと安心です。
- 内容証明郵便での請求:話し合いが進まない場合、請求の意思と日付を記録に残す意味で内容証明を送る方法があります。
- 婚姻費用分担調停の申し立て:合意できなければ家庭裁判所に調停を申し立てます。調停委員を交えて話し合う手続きです。
- 審判への移行:調停が成立しない場合は審判に移り、裁判所が金額を判断します。
調停や審判では、双方の収入を示す資料(源泉徴収票、課税証明書、確定申告書など)が重要になります。相手が収入を正直に開示しない場合もあるため、客観的な資料をどれだけそろえられるかが結果を左右することもあります。手続きの全体像が不安な場合は慰謝料・お金まわりのカテゴリの記事も参考にしてください。
支払ってもらえないときの対応
調停や審判で金額が決まったにもかかわらず相手が支払わない場合は、給与や預貯金などに対する強制執行(差押え)という手段が用意されています。調停調書や審判書といった公的な書面があれば、こうした強制的な回収にもつなげやすくなります。逆に、口約束だけで取り決めをしていると後から争いになりやすいため、必ず書面化しておくことが重要だとされています。
別居前に整理しておきたいこと
浮気をきっかけにした別居では、感情が先行して勢いで家を出てしまうこともあります。しかし、婚姻費用や今後の離婚交渉を有利に進めるためには、別居前に冷静に準備しておきたいことがいくつかあります。
- 夫婦双方の収入がわかる資料(源泉徴収票・給与明細など)を控えておく
- 別居開始日を明確にしておく(婚姻費用の起算に関わるため)
- 浮気が原因であることを示す証拠を、適法な範囲で確保しておく
- 子どもがいる場合は、どちらが監護するのかを念頭に置いておく
証拠集めについては、相手のスマートフォンを無断で見たり、無断でGPS機器を取り付けたりといった行為はプライバシー侵害や法令違反となるおそれがあり、推奨できません。違法に得た情報は手続きで使えないばかりか、かえって自分が責任を問われるリスクもあります。客観的で適法な証拠が必要な場合には、探偵業法に基づく届出をしている探偵事務所など、専門家に相談する方法があります。事務所選びの観点は探偵の選び方やおすすめ探偵ランキングでも整理しています。
「そもそも自分のケースで浮気がどの程度疑わしいのか」を整理したい段階であれば、浮気度チェック診断で状況を客観的に振り返ってみるのも一つの方法です。婚姻費用や慰謝料の話に進む前段として、現状の整理に役立つはずです。
よくある質問(FAQ)
Q. 浮気をされた側ですが、別居中の生活費は請求できますか。
A. 収入の少ない側であれば、原則として相手に婚姻費用を請求できるとされています。婚姻関係が続いている限り分担義務は残るため、別居していても請求は可能と考えられています。具体的な金額や認められる範囲は個別事情によるため、専門家への相談をおすすめします。
Q. 浮気をした側でも婚姻費用はもらえますか。
A. 自ら別居の原因を作った有責配偶者の場合、信義則の観点から請求が制限されたり減額されたりすることがあるとされています。ただし、子どもにかかる費用部分は親の責任とは別に保護される傾向があるとされており、扱いはケースによって異なります。
Q. 婚姻費用と慰謝料は両方もらえますか。
A. 婚姻費用は別居中の生活費の分担、慰謝料は浮気による精神的苦痛への賠償で、性質がまったく異なります。一般的には別々に請求できるとされており、片方を受け取ったらもう片方が受け取れなくなるという関係ではありません。
Q. 婚姻費用はいつから発生しますか。
A. 実務上は、相手に請求の意思を明確に伝えた時点からの分が認められやすいとされています。別居開始時に自動で過去分まで遡るとは限らないため、別居を始めたら内容証明郵便や調停の申し立てなどで、早めに請求の意思を記録に残しておくことが大切だとされています。
Q. 相手が婚姻費用を払ってくれない場合はどうすればよいですか。
A. まずは話し合いや調停を通じて取り決めを書面化することが基本です。調停調書や審判書がある状態で支払いがない場合は、給与や預貯金への強制執行(差押え)といった手段につなげられることがあります。口約束のみだと争いになりやすいため、書面化が重要だとされています。
Q. 浮気の証拠は自分で集めても問題ありませんか。
A. 適法な範囲であれば構いませんが、相手のスマートフォンを無断で見る、無断でGPS機器を取り付ける、といった行為はプライバシー侵害や法令違反となるおそれがあり推奨できません。客観的で適法な証拠が必要な場合は、探偵業法に基づく届出をしている探偵事務所など専門家への相談を検討してください。
✏️ 近藤 直人 より
浮気で別居を選ぶとき、多くの方が慰謝料ばかりに目を向けがちです。けれど、別居期間中の生活を支えるのは婚姻費用であり、これは離婚の結論を待たずに今すぐ関わってくるお金です。請求のタイミングが遅れるほど受け取れたはずの分を取り逃すこともあるため、感情が揺れている時期だからこそ、別居開始日や収入資料といった事実を冷静に記録しておいてほしいと思います。金額の試算や有責性の判断は個別性が高く、最終的には弁護士など専門家の力が欠かせません。一人で抱え込まず、早めに相談の一歩を踏み出してください。
