📌 ひとことで言うと
示談書とは、不倫・不貞行為のトラブルを裁判ではなく当事者間の合意によって解決するために作成する文書です。慰謝料の金額・支払方法・接触禁止・口外禁止などの条件を明記し、双方が署名・押印することで法的効力が生まれます。
配偶者や交際相手の不倫が発覚したとき、すべてのケースが裁判所での争いに発展するわけではありません。当事者同士の話し合いや弁護士を介した交渉によって、示談(合意による解決)という形で決着を図る場合も多くあります。その合意内容を書面化したものが「示談書」です。示談書をきちんと作成しておくことで、後から「言った・言わない」のトラブルを防ぎ、合意事項を法的に担保することができるとされています。本記事では、示談書の役割・盛り込むべき条項・作成時の注意点を解説します。
示談書の役割と法的な位置づけ
示談書は、民事上の損害賠償請求を当事者間の合意で解決したことを証明する文書です。不倫・不貞行為の場合、被害を受けた配偶者(または婚姻関係のある当事者)は相手方に対して不法行為に基づく損害賠償(慰謝料)を請求できると民法上定められています。示談書にはこの慰謝料の金額と支払条件を明記し、「それ以上の請求はしない」旨を確認することが多いです。
示談書は公正証書ではありませんが、署名・押印のある書面として証拠能力を持ちます。ただし、強制執行力(相手が支払わないときに自動的に財産を差し押さえる力)は通常の示談書には生じません。支払いの確実性を高めたい場合は、公証役場で「強制執行認諾文言付き公正証書」として作成することが有効とされています。最終的な法的効果や手続きについては、弁護士にご確認ください。
示談書に盛り込む主な条項
示談書の内容はケースによって異なりますが、不倫トラブルでは一般的に以下の条項が含まれることが多いとされています。
| 条項 | 内容の例 |
|---|---|
| 慰謝料の金額・支払方法 | 「○○万円を○年○月○日までに一括(または分割)で支払う」など具体的な金額と期日を明示 |
| 接触禁止条項 | 不倫相手と配偶者が今後一切連絡・接触しないことを取り決める |
| 口外禁止・秘密保持条項 | 示談内容や不倫の事実を第三者に漏らさない旨を定める |
| 清算条項(不再請求条項) | 本示談書をもってこれ以上の請求をしないことを双方が確認する |
| 違約金条項 | 接触禁止や口外禁止に違反した場合の違約金額を設定する |
| 不倫関係の解消確認 | 不倫関係をすでに解消済みであること、または解消することを明記する |
清算条項は特に重要で、この条項がないと示談成立後に再度請求される可能性が残るとされています。また、接触禁止や違約金条項を設けることで、再発防止の抑止力になると考えられています。
示談書の作成手順と注意点
作成前に証拠を整理しておく
示談交渉を有利に進めるためには、不貞行為を裏付ける証拠を事前に整えておくことが重要とされています。証拠がない状態では交渉の土台が弱くなりがちです。探偵事務所(興信所)が作成する有効な証拠としては、ふたりが同行する様子の写真・動画、ホテルへの出入りを記録した調査報告書などが挙げられます。証拠収集の方法については調査方法の解説もご参照ください。
示談書の形式と署名・押印
示談書は原則として2通作成し、双方が署名・押印した上で各自1通を保管します。記名のみでも有効とされる場合がありますが、実印(または認印)を押すことで書面の信頼性が高まります。また、日付を必ず明記することが重要です。
弁護士への依頼を検討する
示談書の文言によっては、意図しない法的効果が生じたり、重要な条項が抜け落ちたりするリスクがあります。特に高額の慰謝料が絡む場合や相手方が交渉に応じない場合には、弁護士に示談交渉を依頼することが望ましいとされています。慰謝料の相場についても事前に把握しておくと、交渉の参考になります。
示談書作成後のトラブルを防ぐために
示談書を交わした後に問題が起きるケースもあります。たとえば「相手が慰謝料を支払わない」「接触禁止を破られた」などが典型的なトラブルです。このようなリスクを軽減するために、以下の点が有効とされています。
- 支払いの担保として公正証書(強制執行認諾文言付き)を作成する
- 接触禁止違反への違約金額をあらかじめ明記しておく
- 分割払いの場合は期限の利益喪失条項(一定回数滞納したら残額一括請求できる旨)を入れる
- 示談書の原本を安全な場所に保管し、コピーも取っておく
示談はあくまで当事者間の合意であり、合意内容が不当・不公平であっても後から取り消すことは基本的に難しいとされています。署名・押印をする前に内容をしっかり確認し、不明点は専門家に相談することが重要です。
なお、証拠収集の段階では適法な方法を取ることが大前提です。無断でのGPS設置・盗聴器の設置・住居侵入・スマートフォンへの不正アクセスといった行為は法律で禁止されており、違法収集証拠として証拠能力を否定される場合があるほか、刑事責任を問われる可能性もあります。証拠収集は信頼できる探偵事務所に依頼することをお勧めします。
よくある質問(FAQ)
Q. 示談書は必ず弁護士に作ってもらわないといけませんか?
A. 法律上、示談書の作成に弁護士への依頼が義務づけられているわけではありません。当事者同士で作成した示談書も法的効力を持つとされています。ただし、条項の抜け漏れや不利な文言が含まれるリスクを避けるため、高額の慰謝料が絡む場合や相手方との交渉が難航している場合は、弁護士への相談・依頼を強くお勧めします。
Q. 示談書に署名した後、やはり裁判を起こすことはできますか?
A. 示談書に清算条項(これ以上の請求はしないという合意)が含まれている場合、原則として同じ件について再度裁判を起こすことは難しくなるとされています。ただし、示談成立後に新たな不貞行為が発覚した場合など、別の請求原因が生じたケースは別途判断が必要です。個々の状況については弁護士にご確認ください。
Q. 配偶者の不倫相手とだけ示談書を結ぶことはできますか?
A. はい、可能とされています。不倫の慰謝料請求は、不倫相手(配偶者の交際相手)に対してのみ行うこともできます。ただし、示談書の内容によっては配偶者への請求権にも影響が出る場合があるため、「配偶者への請求は留保する」旨を明記するかどうかも含め、弁護士に事前確認されることをお勧めします。
✏️ 佐倉 理恵 より
示談書は「合意の証拠」として非常に重要な文書です。感情的になりやすい状況だからこそ、冷静に条項を確認してから署名することが大切です。特に清算条項と接触禁止条項は後々の安心感に直結します。迷ったときは必ず専門家に相談してください。
